連載 No.48 2017年02月05日掲載

 

車の荷室フィルムでいっぱい


昨年末、撮影に出かける愛車を錆の為に廃車にすることになり、

代わりの車を業者に依頼してほぼ2ヶ月、やっと見つかった中古車で1ヶ月遅れの撮影旅行が始まった。

当初、指定した車はすぐに見つかる思っていたが、まったく同じ車種年式、

車両の錆びが少ないことなどに加えて、一桁(10万円以下)と言う条件は厳しかったようだ。

さらに納車されてからもあちこちにトラブル発覚。すぐに北海道に出発するのは危険との判断で遅れてしまった。



価格が一桁といっても、それは業者間の仕入れ値で、

最終的に車検を取って、基本的な修理を含めると約30万円。これならそこそこ走ってもらいたい。

すでに車齢15年を越え、走行距離10万キロ以上だ。

以前の車が20万キロ走ったことを考えればまだまだ現役、さすが日本車だ。



同じ車種にこだわるのは理由がある。

運転感覚はもちろんだが、荷物の収納量が大きいこと。

撮影道具そのものはカメラバッグと三脚が2本。これは助手席の足元におさまるほどだが、

車内泊の生活用品と寝床以外に広いスペースが必要なのが、大量の撮影用フィルムだ。



フィルムというと、ポケットに入る小さなものを思い浮かべるだろうが、

私が使用するフィルムは4×5インチ(シノゴ)といって、はがきよりも少し小さく、書類用のクリアファイルほどの厚さのもの。

たくさんあってもかさばるものではない。



しかし撮影するためには、フィルムを撮り枠(とりわく)といわれるフィルムホルダーに一枚ずつ装てんしておかなければならない。

これがフィルムよりも一回り以上大きくて、タブレットパソコンのアイパッドミニくらいの大きさだ。

用意するのは300枚以上だから、普通の車ならトランクはそれだけでいっぱいになる。

結露や静電気など、すべてにおいてカメラ以上に気を配り、

持参したすべてのフィルムを使い終わると撮影旅行は終了だ。



40年前からこのフィルムを使っているが、
そのころの写真学校でさえ、

白黒写真のために大きなカメラや1枚撮りのフィルムを使うのは「古臭い」思われ、肩身が狭かった。

さまざまな写真表現の中で、ひとつのジャンルとして海外では認められていたことを思うと少なからず残念な話である。



なぜこのカメラでなければならないのかというと、まずは絶対的な描写力。

そして遠近感などの視覚をコントロールする光学的な構造に優れている点。

さらにネガの作り方やプリント方法も細部まで手を加えることができ、自分の微妙な感覚を反映できる。

誰でも同じようにきれいに撮れるという写真機の理想とは大きくかけ離れているが、そこが魅力といえなくもない。